「1on1で部下が話してくれない」原因は?沈黙する3つの心理と、明日から使える対話技術【前編】

「今週の1on1、何を話せばいいのだろう」
「何か困ってることある?と聞いても、特にありませんと言われて会話が終わる」
部下との1on1の時間に、憂鬱さを感じている管理職の方もいるのではないでしょうか。
話題がないことに耐えきれず、一方的に業務の話をして時間を埋めてしまう。
その結果、部下はますます口を閉ざし、1on1が形骸化してしまうこともあるでしょう。
本記事では、部下が口を閉ざす沈黙の正体を紐解き、管理職が陥りがちな誤解を解消し、明日から実践できる対話スキルをお伝えします。
本記事は前後編の【前編】です。まずは部下が口を閉ざす沈黙の正体を紐解き、脱却する方法を解説します。
部下が話してくれない、3つの心理的背景
「ネタ切れ」や「部下のやる気がない」というのは表面的な事象に過ぎません。部下が沈黙を選ぶ背景には、より根深い心理的メカニズムが働いています。ここでは代表的な3つの要因を解説します。
学習性無力感による諦め
心理学者マーティン・セリグマンが提唱した「学習性無力感(Learned Helplessness)」をご存知でしょうか。「抵抗しても無駄だ」という経験を繰り返すと、人はやがて、状況を変える努力を放棄する心理状態になります。
1on1で部下が悩みや困りごとを話してくれない場合、、過去に以下のような経験をしたことがあるかもしれません。
- 否定: 「それは前にも言ったよね」「現実的じゃない」と却下された
- 無視: 提案した際に「考えておく」と言われたが、何のアクションもなかった
- 遮断: 話の途中で遮られ、結局上司の武勇伝や持論を聞かされた
こうした経験が積み重なると、部下は「この人に何を言っても無駄だ」「どうせ変わらない」と学習します。その結果、自分を守るための防御策として、沈黙や当たり障りのない回答を選ぶようになるのです。
これが、多くの職場で起きている沈黙の正体です。
本音を阻害する6つのリスク
部下が上司に本音を話せない背景には、具体的な恐怖が存在します。パーソル総合研究所などの調査でも指摘されるように、部下は常に以下のリスクを計算しながら発言しています。
- 低評価リスク: 「ネガティブな発言や弱音を吐くと、人事評価に響くのではないか」
- 無関心リスク: 「勇気を出して相談しても、真剣に受け止めてもらえないだろう」
- 身分不相応リスク: 「自分の立場で意見を言うのは生意気だと思われるのではないか」
将来のキャリアに不安を持つ若手社員は“身分不相応リスク”を感じやすく、責任ある立場の中堅層は“低評価リスク”に敏感になる傾向があります。
心理的安全性が担保されていない場では、沈黙こそが最も合理的で安全な生存戦略となってしまうのです。
目的の不一致による混乱
3つ目の要因は、1on1の目的に関する認識のズレです。
上司は業務の進捗確認をしたいのか、部下のキャリア支援をしたいのか。
この目的が曖昧なまま1on1を行うと、部下は混乱します。
会社からは「1on1は部下のための時間だ」と言われて参加したのに、実際には「あの案件の数字はどうなっている?」と詰められれば、部下は警戒心を強めます。
1on1は、「成長・育成のための時間」であるべきです。
評価面談や進捗会議ではなく、「あなたの成長と支援のための場である」という共通認識がなければ、対話は成立しません。
「話すことがない」からの脱却。関係の質を変える方法
沈黙を打破しようと、慌てて雑談のネタ帳を検索しても、根本的な解決にはなりません。テクニックに走る前に、組織の成功法則である“成功の循環モデル”を理解する必要があります。
成果を焦るほど遠ざかる“バッドサイクル”
MIT組織学習センターの共同創始者ダニエル・キム教授が提唱した「成功の循環モデル(Core Theory of Success)」では、組織の質は以下の順序で循環するとされています。
- 関係の質(お互いに尊重し、一緒に考えられる関係)
- 思考の質(気づきや面白さを感じ、前向きに考える)
- 行動の質(自発的に考え、新しいことに挑戦する)
- 結果の質(成果が出る、業績が上がる)
多くの管理職は、成果を求めるあまり“結果の質”から入ろうとします。
「なぜ未達なんだ」「どうやって数字を作るんだ」と結果を問い詰めると、部下との関係の質が悪化します。 すると部下は思考停止状態になり、言われたことしかやらない、さらに成果が出なくなる、というバッドサイクルに陥ります。
「話すことがない」という状態は、このサイクルが逆回転している証拠かもしれません。
遠回りに見えて最短の“グッドサイクル”
1on1が目指すべきは、この逆のサイクルです。まずは“関係の質”を高めることに注力します。
「最近どう?」「体調は大丈夫?」と相手に関心を寄せ、話しやすい場を作る。業務の話だけでなく、価値観や体調にも目を向ける。すると部下は「自分のことを人間として見てくれている」と感じ、信頼関係が生まれます。
関係の質が高まれば、自然と「もっとこうしたい」という前向きな思考が生まれ、それが自発的な行動につながり、最終的に持続的な成果(結果の質)をもたらします。
一見遠回りに見えますが、“関係の質”からスタートさせることこそが、結果を出すための最短ルートなのです。雑談や体調確認は、サボりではなく、この土台を作るための重要なマネジメント業務です。
まとめ:まずは「関係の質」から始めよう
部下が沈黙するのは、上司を拒絶しているからではなく、構造的な不安や諦めが原因であるケースがほとんどです。まずは「結果」を焦らず、「関係」を築くことから始めてみてください。
【後編】では、この「関係の質」を高めるための具体的な対話テクニックと、明日から使える「質問例」をご紹介します。
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